2014-09-21

<プロフィール>
カレン・ロバート / Cullen Robert
Suphanburi F.C.(タイプレミアリーグ)


2004年、市立船橋高校からジュビロ磐田に入団。2010年にロアッソ熊本に移籍した後、2011年シーズンよりオランダ・VVVフェンローでプレー。2013年終盤よりタイプレミアリーグ スパンブリーFCに所属。

 

昨シーズン終盤、オランダ・VVVフェンロからタイプレミアリーグの新鋭・スパンブリーFCへ加入したカレン・ロバート。日本での華やかな実績を持つ彼のタイ移籍は、その高待遇とともに日本でも注目を集めた。本格的なタイ1年目となった今季もすでに終盤、スパンブリーでの一年を振り返ってもらった。

 
-タイリーグでプレーする最初のシーズンも終盤です。ここまでタイサッカーに対して、率直にどんな感想を持っていますか。

連戦が多い、試合数が多いなと。今年は20チームあるのでリーグ戦が38試合、プラス、カップ戦が二つあるので大変なリーグだと思います。今季は特別なのかもしれませんが(注:今季タイプレミアリーグのチーム数は2クラブ増えて20チームに、来季は再び18チームに戻される予定)。
 


-移動の大変さというのもありますか。

移動というよりは、単純に試合数が多い。ウチはターンオーバー制をけっこうはっきりとやっていて、試合前に「出る」、「出ない」ということを言われるのでまだ楽なところはありますが。カップ戦で勝ち残っているのもありますけど、Jリーグなら夏に一度連戦があるくらいなのが、タイはシーズンを通してかなり多いですね。個人的に動きたいプレースタイルなので、正直、二日や三日では回復できない。そこをうまくやっていかなきゃいけない、それが反省というか課題ですね。
 


-コンディションを保つのが難しいということですね。

開幕してすぐに臀部が痛くなって、プレーできる範囲ではあったんですが思い通りの動きができなかった。メディカルスタッフに三ヶ月くらい全部あずけたんですが、全然治らなかったんです。最初左側が痛くて、7月頃に今度は右側が痛くなって。正直、全部任せてはダメですね。日本、特にJ1時代のメディカルの質は本当に高かったと思います。
 


-そんななか、ここまで32節を終了して19試合7ゴールという成績です。

先発は10試合あるかないかですし、思ったよりも出られていません。途中出場からの得点も多いですし、良くもないし悪くもない、微妙な結果だと思っています。タイの場合、後半からの途中出場だとやりたい放題なんですよ。スペースがありすぎて、パワーも落ちている。しっかり最初から出た上での得点は少ないですからね。
 


SCGムアントン・ユナイテッド戦でのリーグ初ゴールなどは、スピードで圧倒した見事なゴールでした。コンディションは悪くないように見えましたが。

あれは怪我から復帰した直後でしたからね、相手が遅かったのかもしれない。勝っている状況での途中出場で、相手のムアントンは前がかりでしたし、僕のコンディションが良かったというよりは相手が良くなかったのかなと。ウイングをやることが多いんですが、対する相手のサイドバックはほとんどがタイ人の選手。正直、ちゃんとした1対1の状況になれば、フィジカルもスピードも負ける気はしないですね。
 


-タイ人選手の能力は、やはり見劣りしますか。

いや、日本の選手ほどではないかもしれませんけど、技術はあると思いますよ。ただ、小さいですし、日本人のような一瞬の速さ、アジリティがあまりないんですかね。1対1なら大丈夫、という感覚はあります。自分がオランダで学んだことを実践できている、というのもあると思いますが。
 


 

 

-オランダで学んだこと、とは具体的にどんなことですか。

ボールを受けた時に、自分の状況、今行く時なのか行かない時なのかという判断ですね。1対1だけどカバーされる準備が出来ていれば行かない、完全にカバーがいなければ行く、というような判断を顔を上げてとにかく早くするように心がけています。


 
-その判断がオランダで変わったんでしょうか。

サイドが抜けばすごいチャンスになるし、逆にサイドで取られてもそれほどピンチでもない。それがはっきりわかったので、自分で行くことをまず大前提で考えるようになりましたね。昔はボールを持ったらまずパスコースを探すことが多かったんですが、今はパスはなるべくしない。日本だと1タッチ、2タッチということを言いますけど、3タッチ以上でもあまり離したくありません。


 
-海外に出て数字に表れる結果にこだわるようになった、と以前言われていました。それとも通じる部分ですね?

ただ、それがまだ思っているほど直接結果に結びついてはいませんけど。自分で行って決めたのは、ムアントン戦の1点くらい。他はクロスに入っていって決めたものが多いですから。自分で行ってバンバン決める、という理想にはほど遠いですね。アシストもあまりできていませんし、まだまだです。
 


-それでもやはり、ゴールという結果へのこだわりは強いんですね。

そうですね。ゴール近くに入っていってというのをベースに6割、残りの4割はドリブルとか自分のシュートスキルで決めていけるような選手になっていきたいと思っています。そういうモチベーションがあるから今、がんばれています。


 
-タイサッカーの印象について技術レベルは低くない、ということでしたが、問題や課題はどういった点でしょう。
 
戦術面ですね。まず現状、ゾーンという戦術はできないと思います。マンツーマンでわかりやすくないと理解できないから、監督もはっきりとしたわかりやすいことしかしない。シンプルにマークを当てはめる、誰かを“ぼかす”ようなことはできないです。そういう戦術的な部分では遅れているのかなと。


 
-それは選手の理解力の問題なんでしょうか。

理解力なのか、やったことがないのか、根付いていませんね。ただ、ブリーラム・ユナイテッドだけは唯一、他のチームでは味わえないことをしてきます。たとえば日本では当たり前のプレスバック(挟み込んでプレッシャーをかけること)なども、はっきりと感じるのはブリーラムだけ。下位のチームほどすぐに間延びしてラインが二つになる傾向がありますが、そこもブリーラムはしっかりしています。みんながちゃんとやるから強い、やっぱりタイでは抜けていると感じますね。


 
-その他にプレー面で問題を感じるところはありますか。

メンタル面というか、サボってしまう。ボールを取られたら取り返すとか、当たり前のことができていません。ボールを取られたのに歩くとか、日本では信じられません。そういうのは大嫌いなので、その場で名前を叫んで怒っています。


 
-タイの選手は強く言われるのを嫌がると聞きますが、反応はどうですか。

聞いてくれますよ、理解しようとしてくれる。相手が後ろを向いていたら行けとか、相手が余裕持っているなら行くなとか、そういうことを言い続けてだいぶよくなったかなとは思います。まだまだですが。
 


-プレー以外の面では文化的なギャップ、時間にルーズな点などに戸惑う日本人選手が多いようですが。

ウチはけっこうしっかりしていますよ。遅刻の罰金なども厳しくやっているので、みんな時間通りに来ますし。バンコクまで1時間半くらいで行けるんですが、連戦が続いている時はスパンブリーに泊まらなければいけないとか、規律的には他のチームよりしっかりしているような気がします。契約面も契約の通りにすべてやってくれていますし、ビザもちゃんと取ってくれる。そのへんは事前に聞いていたのと違って、ウチのチームは問題ありませんね。


 
-では、練習の内容などもきっちりしていますか。

正直、練習メニューについては、あまり意味がないんじゃないか、と思うようなメニューがけっこうあります。ただ、ブラジル人のテクニカルがいて、その人がしっかりスカウティングしているので、そういうところはきっちりしています。パスの成功率とか細かいデータを渡してくれてちゃんと分析もするし、日本と変わらないクオリティですね。場所は田舎で何もないですけど、総合的にはいいクラブなんだと思います。


 
 

-日本の選手に相談されたら、タイリーグは勧められるリーグですか。

バンコクのチームなら、問題なく勧めますよ。ただ、本当に成功したい、本気でタイでステップアップしたいならブリーラムを勧めますね。場所は田舎だけど娯楽がないからサッカー漬けになれるし、ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)に出場できる可能性も非常に高い。若いうちにACLに出たらけっこういいステータスになるし、いい経験にもなる。あとは、チョンブリーFCですね。“第二の平野甲斐”(注:平野は今季、ブリーラムからセレッソ大阪へ移籍)を生むとしたら、この2チームくらいじゃないですかね。他のチームは、若い子にはあまり勧めないかもしれません。


 
-現在、スパンブリーFCはタイFAカップで準決勝進出。まだ来季の出場枠は発表されていませんが、このタイトルを取ればACLにつながる可能性もあります。

もともとウチの会長はこのタイトルを目指していて、それが現実味を帯びてきているのでぜひ獲りたいですね。僕は会長のことが好きなので、会長の夢を叶えてあげたいという思いはあります。日本のことをよく言ってくれるし、自分が悪いことをした時でもいつもかばってくれる人なので。


 
-最後に、今季はもう残り少ないですが、今後の目標を教えてください。

まず今季は残り6試合、あと3点取って二桁ゴールしたいと思っています。それからFAカップのタイトルを獲って、もし来季、ACLで日本に凱旋できたら最高の形ですね。
 

<了>

Text: 本多 辰成 / Honda Tatsunari

Photo: Suphanburi FC

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