2014-11-08

<プロフィール>
河村 崇大 / Kawamura Takahiro
TOT SC (タイプレミアリーグ)

1998年にジュビロ磐田に入団。2008年まで在籍しジュビロ磐田の黄金時代を築く。その後、セレッソ大阪、川崎フロンターレ、東京ヴェルディでプレー。2010年にタイプレミアリーグのポリスユナイテッドに移籍。現在はTOT SCでプレー。

まだタイでプレーする日本人選手が少なかった2010年、Jリーグの実績を十分に積んだ河村崇大はタイでのプレーを選ぶ。それから4年。契約打ち切りや降格危機などの苦境を乗り越え、現在はTOT SCの副キャプテンとしてチームを引っ張る河村にここまでの道のりについて聞いた。
 

-先ずはタイ来た経緯から教えて頂けますか?

日本で所属していた東京ヴェルディで解雇になってしまったんですけど、サッカーを続けたくて、けど日本ではチームがなく、当時の代理人が丸山さんからタイことを聞いてそれからテストを受けに来たのが始まりでした。タイという国に特に抵抗もなく、それよりも”サッカーを続けたい”という気持ちのほうが強く来たって感じです。当時はサッカーが続けられればJFLや地域リーグでもいいと考えてたので、抵抗ってのは全くなかったし、本当にサッカーがやりたいってことだけでした。


-当然最初はテストを受けられたんですよね?

最初はOSOTSPA(オソサパ)というタイプレミアリーグのチームのテストを受けました。チームは何故か大会中で、一応それに同行したんですけど、プレーさせてもらっても自分の得意とするポジションじゃなかったりと、イマイチ噛み合わず。結局3週間もいたんですけどダメになりました。一旦日本に帰って、次に紹介があったポリスユナイテッドF.Cのテストを受けることになりました。ただ前回のオソサパの経験もあって、3日限定で見てもらうと条件を付けてテストを受けることにしました。そして3日間のテストの後、無事受かりました。


-契約の条件内容は問題なかったんですか?

僕は条件は何も言ってないです。家族がいるのでスクンビット(日本人が多く住むエリア)に住むってことだけですね。本当にそれ以外は何も言ってない。


-タイで初めてのシーズン。プレーしてみての印象は如何でした?

2010年シーズン開幕3日前にチームに合流し開幕戦から出場しました。プレーしてみて、いやぁー日本と違うなって印象で、えらい差があるなとは思いました。それと同時に違った意味の難しさもすぐに感じました。サッカー以外の力、オーナーだったりお偉いさんの力が凄いある。それに気を遣ってプレーしている印象を受けました。まぁポリス(タイの警察のチーム)だったから余計そういうのがあったのかもしれませんけど、僕がいた時は警察の幹部がチームのオーナーだったので、パトカー先導で練習場や試合会場に現れると選手や監督スタッフもピリッとなってましたよ。プレーの面で言うと、根本的なメンタルが違うというか、当時は日本の感覚のままでいたので、「いやぁどうしたらいいんだろう?」 と、最初はそうでしたね。


-我慢しながらのプレーだったんですか?

我慢は出来なかったので日本の感覚でガンガン言ってましたよ。当時はタイ語も出来なったので英語や日本語であーだこーだ言ってました。けどそれじゃうまく行かない事に気づいて、今では何も言わなくなりましたけどね。


-やっぱり厳しく言うとタイ人は受け入れないんですか?

タイ人も僕の経歴を知ってて、Jリーグでやってたのは認めてくれます。なので、何か言えばその時は「ハイハイ」と聞いてくれます。けど自分は怪我が多くて、復帰と離脱を繰り返していて、そうなると “あんたプレーしてないでしょ” って雰囲気になって、言っても響いてないという印象は受けましたね。怪我してたらダメだなと。


-翌年ポリスユナイテッドを離れますが、その経緯は?

ポリスユナイテッドとは2年契約で来ました。なのに怪我が多かったのもあって一年で解雇になりました。契約書にも2年契約とあるんですけど、よく見るとチームの事情で解雇できることになってた。当時はそんなことも知らなかったし、当然 「なんで?」となった。けど怪我もあったし仕方ないかなと思ったのと、あとポリスユナイテッドが次のチームの紹介してくれて練習参加出来るようにアレンジしてくれたのは唯一の救いでした。


-それが今所属するTOT SC なんですね

当時はTOT CATというチームで、TOT(タイ電話公社)とCAT(タイ通信公社)が一緒にチームを運営してたんですけど、僕が行った時はTOTとCATどっちが主導権を握ってやるか揉めていた時期。たまたま僕はTOTに行って、結果TOTが主導権をとったからよかったんですけど、CATだったらまたチームがなくなってましたね。ある意味ラッキーでした。


-テストはどのように実施されたんですか?

誰一人チームと契約している選手がいなかったので、全員テスト生です。ものすごい数の外国人が来てて、皆で紅白戦やってました。僕の場合は監督が僕がフロンターレに所属してた時にACLで対戦したバンコクユナイテッドの監督で、僕のことを知っててくれたのと、監督も日本でプレーした経験もあって日本語も分かるので、それですぐにOKとなって入団が決まりました。


-TOTに無事入団してタイでのプレーを続けるわけですが、ポリスユナイテッドの契約を1年で打ち切られて、タイはもういいやってならなかったんですか?

その時に絶対に見返してやろうと思いました。このままじゃ日本に帰れないし、絶対にタイで認められるようにプレーしてやろうと。自分を解雇したポリスに後悔させてやろうって思いました。


-解雇されたことには当然納得いってなかったんですよね?

感覚的には2年契約なのに、怪我があったにしても半分以上は試合も出てたし。あとは練習に早く来て準備したり、練習の中から100%でプレーを続けてたし、少なからずポリスには何かしらの影響は与えてたと思ってたので。それでも解雇になって、これでも足りないのかと思ったのと同時に絶対見返してやろうと。



 

-新チームTOTとしてゼロからの出発でしたが、如何でしたか?

成績は残留争い。ずっと下位に沈んでました。僕は出場停止以外ほとんど出場しました。プレーの面で言うと、一年目(ポリスユナイテッド)では周りにうるさく言ってたんですけど、TOTでは殆ど言ってません。自分の背中で見せてそれを感じて欲しいと思ってプレーしてました。黙々とやったほうがタイ人には響くと分かってきた時期でもあります。


-タイ人選手は見て感じてくれますか?

自分と同じ年くらいのキャプテン(タイ人)がいて、彼は他のタイ人にとって絶対的な存在で、その彼が自分の事を認めてくれてしっかりやるので、影響はあると思ってます。


-TOTには現在4年目。タイで外国人として同じチームに4年所属するのはなかなか大変な事だと思いますが。

最初TOTに入ったときは2年契約にしましたけど、今は1年契約です。僕はTOTに拾って貰った身なので、TOTが契約してくれるならずっとここでプレーしようと思ってます。本当に感謝の気持ちしかないですし、契約条件についても自分から何か要求したこともないです。チームがこれでと出した条件に一発でサインしてます。それだけ感謝してて、サッカーをやれせてもらってる思いです。


-現在タイでのキャリアは5年目ですが、自分の中のサッカー感に変化はありますか?

そもそも日本時代はあんまりサッカー感とか考えた事なかったんですけど、タイに来てサッカーについてより考えるようになったと思います。自分の見せ方というか、どうやったら自分が生き残れるのかを考えながら行動するようになったとは思います。それは契約があってないような世界だから、それならば自分でどうにか生き残るようにしないといけない。あとは出来るだけサッカーを続けたい。その為に自分の存在価値を出さないといけないし、それが日本にいた時とは明らかに違う点です。


-ぶっちゃけ、他のチームからのオファーもあったりしますか?

正直ないですし、あったとしても他に移る気はないです。


-今後もタイ(TOT)でのプレーを望んでるのですか?

そうですね、年齢的にもどこかに移る時期じゃないですし。


-タイプレミアリーグでキャンプテンをやっている日本人は河村選手だけですよね?

正確には別にキャプテンがいるんですけど、その選手が試合に出ないときに自分がゲームキャプテンをやってます。本当は副キャプテンです。一年目から監督に指名されてやってます。たぶん年齢が上ってのと、今までの経験や日頃の練習態度を見てくれたんだと思います。


-キャンプテンとしてどう行動されてますか?

とにかく盛り上げるようにしています。すぐシュンとなるので、自信を持てせるように褒めてます。試合中は盛り上げるように意識してますけど、普段の練習では黙々とやってますし、チーム全員の前で話したりもないです。話せって言われてもタイ語でうまく話せないですけどね(笑)



 

-プレー中はタイ語でコミュニケーション取ってるのですか?

はい、タイ語ですね。TOTに入ってから日本人は当然いないので勉強しました。サッカーするには問題ないです。あと監督と考えが合うのか、僕が思ってることを監督も考えているので、言葉を全部理解できなくても通じ合うところがあります。


-自身の経験を他のチームメイトに伝えたりするんですか?

全然ないですね。自分から言っても響かない思ってますし、聞かれた時は答えますけど。


-チームの規律面はどうしょう?

どこのチームも同じだと思うんですけど、時間通りに練習が始まったこともないです。それをあーだこーだ言っても仕方ないですし、それがイヤだったら自分が出て行くしかないです。それは全て受け入れてやってますけどね。というかタイは受け入れないとやっていけないですよね。



 

-現在タイに60人以上の日本人選手がいることについては?

嬉しいですしもっと来て欲しいです。今でもタイでプレーする外国人の中で日本人のクオリティが一番だと思ってます。今後どのチームにも日本人がいて重宝されるようになれば、と常に思ってます。もっと増えて欲しいです。

 
-これだけ日本人が増えた要因にお金の良さもあるといわれてますけど、ご本人は実感しますか?

僕ですか?全くないです(笑)最近来た選手は知りませんけど、僕はチームにいくら欲しいと要求したこともないですし、チームが出してくれる金額を受け取るだけです。

 

-タイに来た当初に比べるとリーグ全体のレベルは上がってると感じますか?

上がってると思います。いい外国人が入ってくるようになったし、タイ人の意識も変わりつつあって、Jリーグの初期のような感じですかね。今では日本代表経験者が来るくらいですからね。

 
-現在はご家族も一緒にタイですよね?

ありがたいことに僕の好きなようにやらせてもらってます。本当に感謝してます。


-タイという国は好きですか?

大好きですね。最初はそんな感覚なかったんですけど、今は日本に帰っても早くタイに帰りたいなと思うようになった。何か分かんないですけど、感覚的に好きですね。また地方だったら違うのかもしれませんけどね。家族も気に入ってると思いますよ。


-これからタイでプレーしたい選手へ、どういったことをアドバイスしますか?

アドバイス出来るような立場じゃないんですけど、日本から来てすぐの選手は日本と違い過ぎるのでガッと言いたくなる気持ちは分かるんですけど、僕もそうでした。正直、言ってもいいと思うんですよ。僕も言ってましたし。ただタイで成功して長くプレーしたいと思うんだったら、言った事と自分のプレーの質を一致させれば認めてもらえます。それが一番ベスト。まぁ理不尽なこともたくさんあるので、とにかく我慢強くやるってのもすごく必要だとは思います。


-出来る限り現役を続けたいとのことですが、セカンドキャリアについて考えたりしますか?

日本にいた時は全く考えてなかったけど、そろそろとは思って考え始めてます。ただ考えてはいるんですけど、イマイチ考えられないんですよね。やっぱりサッカーをやりきりたいほうが強くて、考えないとは思いつつ、まだ考えられてないのが現状です。理想を言えばサッカー以外の他のことがやりたいんですけど、折角タイで長くサッカーやらせてもらってるので、タイでプレーする日本人選手でタイに恩返しが出来る活動をやりたいという思いはあります。そのことでタイでプレーする日本人選手の存在価値が向上しますし、また今後日本からタイでプレーする選手への橋渡しになればと思ってます。

 
-では最後に、選手としての目標を教えて下さい?

出来るだけ現役を長くやりたい。あとタイ人に認められるようなプレーヤーにまだなってないので、タイ人に認められて誰もが知ってるプレーヤーになることですね。

<了>

Text & Photo: ASEAN FOOTBALL Link / TOT SC

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