2015-04-26

<プロフィール>
船山 祐二 / Funayama Yuji
Air Force Central F.C. (タイ Division-1)

2007年、流通経済大学から鹿島アントラーズに入団。セレッソ大阪へのレンタルも含め、4シーズンを過ごす。その後、2011年にモンテディオ山形に移籍。2シーズン在籍した後、アビスパ福岡に加入。13年シーズン終了後、タイ・プレミアリーグ アーミーユナイテッドへ移籍。15年シーズンはタイDivision-1のエアフォース・セントラルFCでプレー。

Jリーグ・鹿島アントラーズなどで活躍したあと、昨季からタイリーグでプレーする船山祐二。昨季はタイ・プレミアリーグ(1部リーグ)のアーミー・ユナイテッドで年間を通して出場しながら、今季はディビジョン1(2部リーグ)での再出発となった。そこへ至る経緯や自身の葛藤、そしてJリーグでの豊富な経験を経て感じたタイサッカーの印象などを語ってもらった。
 
-Jリーグからタイに移籍して2年目ですが、タイサッカーにはどんな印象を持っていますか?

率直な意見としては、思ったよりクオリティがあるなと。鹿島の時にACL(AFCチャンピオンズリーグ)でタイのクラブと対戦して9対1で勝ったことがあるんです(注:2008年、バンコク・グラスFCの前身であるクルン・タイ・バンク戦)。なので、言葉は悪いですけど「弱い」、「レベルが低い」というイメージがあったんですが、間違いなくその時の印象とは違います。
 
-今、タイリーグの急成長が日本でも注目されつつありますが、これからも成長し続けられると思いますか?

チーム全体でプロ意識を持てば、もっとよくなるんじゃないかと思います。何年か前からいい外国人選手を獲るようになって、タイ人選手もクオリティが上がってきた。そういうところまでは来ていると思うので、次のステップに行かなきゃいけない段階なんじゃないかと。
 
たとえば、タイではスタメンで出ていた11人中、9人くらいが次のシーズンで入れ替わるようなことがよくありますよね。どうしてせっかく築き上げたものを一からに戻すのか。それではチームとしてステップアップしていかないですし、そういうところが変わらないとタイの成功というのは見えてこないと思います。
 
-選手の能力的には可能性があると感じますか?

それは本当に嘘抜きで、あると思います。いい選手はたくさんいるし、間違いなく可能性はあります。
 
-Jリーグで活躍できる可能性のある選手もいると感じますか?

Jリーグでも力のあるブラジル人選手が活躍できなかったりもしますし、環境の問題などもあるので実際に活躍できるかはわかりませんけど、絶対に近い将来出てくると思います。
 
去年対戦した中では、スパンブリーFCのタイとスイスのハーフの選手とか(注:タイ代表の新星として注目を集めるMFチャーリー・チャプイ)。タイでは「ボールを奪えるな」と思った時にはだいたい奪えているんですけど、彼には難なくかわされてしまって、「やるな」と。ああいう選手はどんどん海外に出ていけば、タイにとってもいいことだと思います。
 
ただ、いろんな人が同じことを言うと思うんですけど、戦術的な面、組織でチームを作るということに関しては、日本と比べたら、ないに等しいです。Jリーグから来ると、「Jリーグだったらこうなのに」という固定観念から最初は戸惑いがありました。
 
-選手のプロ意識などにもギャップを感じましたか?

感じました。負けても笑っているのとかは自分には考えられないですし、オーナーなんかも「マイペンライ」(注:タイ人がよく使う表現で「大丈夫」、「気にするな」といった意味)と言うんですけど、自分からしたら負けて何がマイペンライだ、と。そこはマイペンライじゃダメだ、というのはすごくあります。
 
誰のせいで負けたかということではなくて、どうして負けたかというのは突き詰めないと。タイの選手はいい時はモチベーションが上がるけど、1点取られたらモチベーションが下がる、みたいなところがあるんです。そういう面も、その「マイペンライ」とつながっているんじゃないかと。
 
-他にも日本との違いを感じることはありますか?

去年のアーミー・ユナイテッドでは勝利給を全選手に配分していたんです。勝利給をメンバー外の選手にも出したら、他人事で「勝ってくれ」となってしまう。それは違うと思っていて、出ている選手より上手くなって、試合に出て、勝ってお金がほしい、というのがチームのレベルアップにもつながると思うんです。
 
自分にとってはマイナス面もあると思いますけど、チームが少しでもいい方向に行ってくれたらいいんじゃないかと思って、気付いたことがあった時は自分の考えを言うようにしていました。
 
-では、プレーの面、練習や試合で気になったことに対しても積極的に言っていますか?

それに関しては選手によって意見が分かれると思うんですけど、自分はやっぱり、同じことはしてほしくないという意味で言っています。言わないで自分がやって示せばいいという人もいると思いますけど、言うことで自分にも責任が持てるので。
 
-昨季、アーミー・ユナイテッドで1シーズンやってみて感触はどうでしたか?

少しずつ、自分の言うことも聞いてくれるようにはなりました。
 
-徐々に信頼を得ていったんですね。

自分からもとけ込むようにしたんです。試合で勝って外へ食事に行く時とかに、外国人選手のグループではなくてタイ人選手と一緒に行ったり。タイ人は引っ込み思案な性格の人も多いと思うので、自分が行くことによって、話せば分かってくれるというか。だから、去年の終わりの頃は自分の中でもアーミーというチームが好きでした。チームを作る人たちからしたら、自分はいらなかったということになっちゃいますけど。
 
-そのアーミー・ユナイテッドでは契約満了となって、今季についてはブログで「かなり悩んだ」ということを書いていましたよね。

サッカーをやめようかとも思いました。最初、日本に帰った時にはやめるという選択肢はなかったんですけど、今回は航空券も自分で手配してトライアウトを受ける形だったんです。もしチームが決まっても待遇や環境が納得いかなければやめるということを、家族には伝えていました。
 
ディビジョン1のチーム(エアフォース・セントラルFC)というのも抵抗があったんです。去年30試合くらいに出て、結果的に得点はなかったですけどアシストは6か7くらいして、自分の中では自分の出来が本当に悪かった試合というのもなかったので。どうしてステップダウンしなきゃいけないのか、それでステップダウンするんだったらこの先の自分はないんじゃないかと。
 
去年は単身だったので、こんな寂しい思いまでして一人でやっている意味があるのかなとかも考えました。いろんな人に相談しながら、やめる覚悟も続けられる覚悟もある、という状況でしたね。
 
 

-結果的に続ける決心をした決め手は?

嫁さんが後押ししてくれて、それで自分も気持ちが高まった。ということは結局、今はサッカーをやったほうがいいんだなと。自分はやっぱりサッカーを仕事として考えているし、その中でも家族は一番大事で、家族が「もうちょっとやってほしい」ということでタイに来てくれることにもなったので。家族のためにもう一回頑張ろうという気持ちになった、というのが本当のところです。
 
-ある意味でリスタートのタイ2年目ですが、どんなシーズンにしたいですか?

何よりも結果だと思います。チームの結果はもちろんですけど、それだけじゃないんだなと去年感じた部分もあるんです。試合に出て「自分はこれだけ貢献している」と言うだけではダメだと思うので、目に見える結果としてゴールとアシストというのも強く意識していきたいです。
 
監督もチームのボスも自分がキープレイヤーだと言ってくれていますし、リーダーというガラじゃないですけど、Jリーグでいい経験はさせてもらっているので、去年の経験も生かしながそういうものをうまく伝えていきたいと思っています。
 
-長くタイでプレーしたいという思いも出てきていますか?

そのために家族を呼んだというのはあります。去年はすぐに帰るかもしれないという気持ちもあったので、家族には「来なくていい」と言っていたんです。今年は「行く」と言われて、自分も来てほしいというのはあったので。去年自分がした経験を子供たちにもさせてあげられたら子供たちにとっても財産になるんじゃないかと思いますし、自分にプレッシャーをかける意味でも今年は連れてきました。

 

<了>

Text & Photo: 本多 辰成, Air Force Central F.C.




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