2015-05-12

<プロフィール>
橋本 卓 / Hashimoto Suguru
Bangkok F.C.(タイ Division-1)


2005年、関西学院大学卒業後、アルビレックス新潟シンガポール入団。07年、活躍が認められデンマークのヴェイレBKへ移籍。09年にJ2のFC岐阜へ加入し12年までプレーした後、13年シーズンよりタイ・オーソットサパー・サラブリーFCに加入。14年シーズンよりタイ・Division-1のBangkok F.C.でプレー。

JリーグのFC岐阜からタイリーグに移籍し、今季で3シーズン目を迎えている橋本卓。大学を卒業後にシンガポールに渡ると、その後はデンマークのクラブにも所属するなど、海外でのプレー経験は豊富だ。日本、アジア、ヨーロッパとさまざまなサッカーを見てきたサッカー人生と、今戦うタイリーグについて聞いた。
 
-タイで3シーズン目を迎えていますが、タイリーグへ移籍した経緯から教えてください。

オーソッサパー(オーソッサパーM150FC)でプレーしていた山本(寛幸)さんから話をもらったのがきっかけでした。オーソッサパーの監督が日本人のボランチをほしがっているということだったんですけど、最初は2回くらい断ったんです。でも、すごくほしがっているという話で、3度目くらいに「行きます」と答えた感じでした。
 
-これまでのキャリアでもシンガポールやデンマークでのプレー経験がありますが、大卒でシンガポールという選択はどういうものだったのですか?
 
とにかくJ1のチームで挑戦したかったんです。J1からのオファーはなかったので、とりあえず練習参加できるところに行こうと。それで、アルビレックス新潟の練習に参加している時に、シンガポールにチームを作ったからそこで何年かやらないか、という話をいただいて。結果を出せばJ1でプレーするチャンスがあるというところに魅力を感じて決断しました。
 
-シンガポールからデンマークに行ったのは?
 
シンガポールでやっていた時に他チームにデンマーク人の監督がいて、その人がデンマークで監督をすることになって呼ばれた形でした。ただ、その人はすぐに解任になってしまって、自分もそれから試合に出られなかったんです。当時は、「どうして外国人枠にアジア人を使っているの?」という雰囲気もあって、悔しい思いもしました。
 
-そこからJリーグのFC岐阜を経て、今回は海外という選択肢はあまりなかったのですか?

家族もいるので、基本的には日本のチームで探していました。でも、山本さんの話を聞いても、タイでの生活は何も問題がないということでしたし、オーソッサパーは力を入れて上位を狙おうというシーズンだということもあって、やりがいもあるんじゃないかと。
 
-実際に来てみて、タイのサッカーにはどんな印象を持ちましたか?

まず練習を見て衝撃を受けましたね。日本とは全く雰囲気が違ってダラダラとしていましたし、「練習をやろう」という感じではないんです。時間通りに始まらないですし、「遊び半分」のような感じで、たぶん日本から来たらみんな衝撃を受けると思います。ただ、これで大丈夫なのかと不安だったんですけど、公式戦になったら練習とは全然違って激しくプレーできる部分もあるんです。タイ人て面白いな、と思いましたね。
 
-では、そういった特徴も必ずしもネガティブなものではない、という印象ですか?

そうですね、国民性もあると思うので。シンガポール人の場合はどちらかというときっちりしていて日本人に近いものがあるんですが、タイ人の場合は日本人とは全く違うという印象です。でも、やるときはやりますからね。だから、試合にどういうふうにアプローチしていくかという違いだと思うんです。タイ人の場合は抜くところは抜きながら、ということだと思います。必ずしも「プロ意識がない」ということではないと僕は思います。
 
-サッカーの質についてはどう感じましたか?

技術の高い選手はいっぱいいるなと思いました。足元も上手いし、フィジカルやスピードなんかは日本人より上の選手もいるんじゃないかと。シンガポール人と比べても、サッカーははるかにうまいです。
 
-シンガポールにいる頃に、タイのチームと対戦する機会などはありましたか?

タイのチームを招待して試合をしたことがありました。チョンブリーFCと、今のブリーラム・ユナイテッドの前身のチームだったと思うんですが、めちゃくちゃ上手かったという印象があります。けちょんけちょんにやられましたし、シンガポールとは全然レベルが違うなと。そのイメージがあったので、「足元の技術があって上手い」という印象はもともと持っていました。
 
-チョンブリーとブリーラムというと、タイでもトップレベルですもんね。オーソッサパーのチームメイトにも同じような印象を受けましたか?

さすがにチョンブリーやブリーラムとは印象が違いましたけど、代表に呼ばれているような選手はやっぱり同じように上手かったですね。
 

-「個人の技術は高いけれど戦術が未熟」と皆さん言いますが、その点はどうですか?

それは、そうですね。根本的にサッカーの知識を知らないというのは感じます。こっちで監督をしている日本人の方も「日本ではアカデミーでやっているようなところから教えないと、自分が思っているサッカーはできない」と言われていましたけど、僕もそれはすごく感じます。
 
-たとえばどんな点に感じますか?

一番感じるのは守備のところです。こういう時はこういうポジションをとるとか、そういうところがわかってないですし、周りも見えていない。試合でも1対1の場面が多くて、チームメイトを助けるという意識もあまりないのかなと。日本なら誰かがサポートして数的優位を作る動きとかをするものですけど、自分のマークする相手しか見ていないという感じがしますね。
 
-練習でもそういう指導はしていないということですよね?

そうですね。指導していても、言っていることが間違っていることがあったりもしました。僕が間違っているのかなと思ってチームメイトの日本人選手に確認してみても、やっぱり「あれは間違っている」と。
 
-具体的には、どういうプレーについてですか?

それは、クロスボールの時のディフェンスの体の向きについてでした。クロスを上げられるシーンで、ディフェンスは「ボールとマークする相手を両方見る」のが基本なんですが、その監督は「マークする相手だけを見なさい」と指導していたんです。新しい考え方があるのかもしれないと思って、けっこういろんなところで調べたりもしたんですけど、やっぱり違う。タイ人選手は言われたことはその通りにやるので、そうなってしまうんです。
 
-ということは、やはり指導者の質にも問題があるということですね。今、日本人監督が来て成功しているチームも多いですが、そういう基本的なことを浸透させられているということでしょうか?

そうだと思います。去年対戦した神戸(清雄)監督のナコンラーチャシーマーFCなんかも、スイッチの入れ方が上手かったです。攻撃ではボールを大事につなぐし、守備でも連動してボールを取っていました。チームとしてやろうとしているサッカーがよかったですから。
 
-橋本選手は、チームメイトのプレーに違和感を覚えた時はどういうふうに接していますか?

怒鳴ったりはしません。そのプレーが終わった時に、ちょっと英語を交えながら「こうしてほしかったんだけど。今の覚えといて」とニュアンスを伝えています。それから、あとでタイ人の通訳の人に、「さっきはどうしてほしかったのか」というのを聞いてもらったりしていますね。
 
-それは、タイ人選手の気質を意識したやり方ですか?


それもありますけど、基本的にはミスに対してはあまり言いたくないので。意見をすり合わせる時とかに言う感じですね。言うか言わないかというのは、正解はないと思うんです。強く言えるような人なら言ってもいいと思いますし、いい方向に行くこともあると思います。僕はそういう選手ではないので、変に言っても逆効果だと思いますから。

-橋本選手は1年目がタイ・プレミアリーグ(1部リーグ。以下、TPL。)、2年目からはディビジョン1(2部リーグ)でのプレーですが、カテゴリーによるギャップは感じますか?

やっぱり、ありますね。サッカーも違うような気がします。TPLのほうがスペースがあると思います。ディビジョン1は、あまりいい意味ではなくて変に激しく来るんです。言葉で説明するのは難しいんですが、「ごちゃごちゃしている」という印象ですね。局面だけガツガツしているという感じがします。
 
-やはり、もう一度TPLでプレーしたいという思いは強いですか?

はい、もう一回やりたいですね。TOT SCの河村(崇大)さんとか、すごく尊敬します。チョンブリーの櫛田(一斗)君もそうですけど、ずっと同じチームで試合に出続けて、ずっと契約をしている。外国人枠でずっと同じチームにいるというのは本当に難しいことですし、すごいことだと思うんです。河村さんはキャプテンマークも巻いていますからね。そういう選手になりたいと思います。



<了>

Text & Photo: 本多 辰成, Bangkok F.C.




関連記事