2015-05-20

<プロフィール>
加藤 明拓 / Kato Akihiro
Cambodian Tiger Football Club(カンボジア)

大学卒業後、株式会社リンクアンドモチベーション入社。
2013年株式会社フォワードを設立。2015年、昨季までカンボジアリーグに所属していたトライアジア・プノンペンFCを買収しカンボジアンタイガーFCのオーナーとなる。

今季からカンボジアリーグに参入する日系クラブ、カンボジアンタイガーFC。昨季までカンボジアリーグで戦った日系クラブを買収する形で新オーナーとなったのが、株式会社フォワードの代表を務める加藤明拓氏だ。急成長する東南アジアの一国ながら、サッカーでも他国に遅れをとっている感の否めないカンボジア。そんな未知数のリーグでの挑戦を決断した理由と、今後のビジョンについて聞いた。
 
-今回は、同じく日系クラブだったトライアジア・プノンペンFCを買収する形でのカンボジアリーグ参入となりましたが、以前からアジアでサッカークラブを保有する考えがあったのですか?

東南アジアにビジネス進出したいとは思っていましたが、正直、カンボジアではないだろうと思っていました。実は去年の2月に一度カンボジアに行っているんですが、その時にトライアジア・プノンペンFCの試合も見ていたんです。印象としてはカンボジアリーグのレベルはまだまだこれからだなと感じていましたし、経済的にも東南アジアで最後発なので、「これはまだ厳しい」と思ったんです。
 
その後、去年の11月くらいにトライアジア・プノンペンFCに問題があって新しいオーナーを探しているという情報がフェイスブックで流れてきたんです。当時は知り合いではなかったんですが、今GMをしている吉田健次に「興味があるので、詳細を教えてほしい」とメッセージを送りました。去年と一昨年の財務状況を見せてもらったんですが、正直、「これは行っちゃダメだな」と思いましたね。年間赤字が3500万円で、チケット収入も全部カンボジアサッカー協会が持っていってしまう。ようは、サッカービジネスで売上が立つ構造にはなっていなかったんですね。
 
これは行ってはいけないと思ったんですが、心の声が「行け」と。こういうものは水物で、お金が出来たから買いたいと言っても買えるものではないですし、逆にタイミングがよくてもお金がないということもあるでしょう。毎年3500万円の赤字というのはなんとか耐えられる規模ですし、15分か20分くらい悩んで、最終的には「これくらいの金額をどうこうできなかったら、そもそも『メッシ超え、バルサ超え』なんて無理だ」と。いいきっかけとして、これをどうビジネス化するかを考えてやっていこうと決めました。
 
-「メッシ超え、バルサ超え」というのをテーマに掲げられていますが、これは以前からあったものなのですか?

26歳か27歳くらいからうっすらとありました。中学生くらいから経営者になりたいとは思っていたんですが、当時の動機は「お金持ちになりたい」「女性にモテたい」という不純なものだったんです。サッカーは高校でやめて、大学を出て会社に入る時も、将来起業に役立つかという軸で選びました。リンクアンドモチベーションというコンサルティング会社に入社したんですが、コンサルタントとして「あなたの会社の存在意義は何ですか」とか「社会にどんな意義を及ぼすんですか」とか聞きながら、自分はどうなのだろう? と思ったんです。「お金持ちになりたい」「女性にモテたい」、それだけでは死ぬ時に「これでよかったのかな」と思うんじゃないかと。
 
ちょうどその頃に、メッシが彗星のごとく現れたんですよ。こいつはものすごいな、と。でも、背も小さいし、こういうプレースタイルってもしかしたら日本人でも出来るかもな、と思ったのがきっかけでした。最初は「メッシを超えるような日本人が出たらいいな」みたいなことを言い始めたら、周りの人間も「それいいよね」みたいになって、じゃあこれをちょっと一生のテーマにしてみようと思ったんです。世界的に見れば日本のサッカーは後発ですし、そこから出たら日本人だけじゃなく、アジアの人たちにも夢が与えられるんじゃないかと。
 
-「メッシ超え、バルサ超え」というのは、サッカークラブを持つということを意味していたのですか?

いくつか選択肢はありました。コンサルタントとして関わるというのも考えましたが、やはり会社の中ではすべてを自分で意思決定することはできませんからね。最終的には、自分でやるしかないということで事業を立ち上げました。
 
-起業して1年目で、たまたまこういったチャンスが訪れたのですね。

もともとのビジョンとしては、2035年に「メッシ超え、バルサ超え」。その前の2025年に「Jリーグクラブを保有」と考えていました。ブランドコンサルティングでお金を貯めていけば、10年後にはJリーグクラブを買える資金もできてくるだろうという予定だったんですが、1年目にパッとカンボジアの話が来たという形でした。
 
参入を決断した理由として、合理的なものとしては三つあるんです。一つは、将来Jリーグのクラブを運営する時に現状では運営の実務経験がないので、小規模で経験を積むということ。二つ目は、Jリーグが将来M&Aのような形になるかもしれませんから、そうなった場合にカンボジアの状況を黒字化したというのはポジティブな要素になるということ。三つ目は、東南アジアのサッカーオーナーは権力者が多いので、東南アジアでビジネスをする上で彼らとネットワークを構築することにも意味があるということです。
 
それからもう一つ、大学時代に一人旅をしている時にカンボジアにも行っていて、ストリートチルドレンと出会ったんです。彼らは住む家もないんですが、「ボールがほしい」と言うんです。彼らに何か出来ることがないかということで「ワンチャイルド・ワンボールプロジェクト」というのもやっていこうと思っています。子供一人にボール一つを贈るということです。そういういろんな要素と、あとは根拠のない自信もあって、ある意味では見切り発車したという感じです。
 
-昨季参入したアルビレックス新潟プノンペンが今年に入って解散するなど、実際、カンボジアでのクラブ運営は簡単ではないのが現状だと思います。

そこはやるしかないですし、やれる自信はあります。目標は3年で黒字化。それは絶対になんとかしたいと思っています。単体で黒字化できなくても、カンボジアでのビジネス展開と合わせて黒字化する。それは自分たちの計画の中では、絶対に行けると考えています。
 
具体的には、一つは今までチケット収入をカンボジアサッカー協会がすべて持って行ってしまっていたのが、各クラブにシェアされる形になりそうだということがあります。そうすると、各クラブも集客を頑張ろうとするのでお客さんも入って、人気が出るのでスポンサーの価値も高まります。それプラス、僕らの強みは日本に本社があって日本での営業ができるので、これを合わせていけば、簡単なことではないですが黒字化は可能だと思っています。現地だけで完結をして黒字化するのは、10年後とかそのくらいなのかなと思いますが。
 
-チームの強化については、どのように考えていますか?

正直、強化については、カンボジアで勝つことは難しいことではないと思っています。おそらく、あと1000万円ほど積めばカンボジアでナンバーワン、少なくとも優勝を狙う上位グループに入れるのは間違いありません。ただ、オーナーとしては一年間は様子を見たいと思っています。どこにどうお金をつぎ込むのが強化、事業に一番インパクトがあるのかを見極めたい。何に絞って、何を捨てて、戦略を組むかということです。これを見極めずにお金をつぎ込むのは誰でもできることですから。今年しっかりと見て、もちろんその中で強化もしますけれど、本格的な投資、強化は来季からと考えています。


<了>

Text & Photo: 本多 辰成




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