2015-07-04

<プロフィール>
吉原 正人 / Yoshihara Masato
Cambodian Tiger Football Club(カンボジア)

育成年代からアビスパ福岡で過ごし、2010年にトップ昇格。12年、ドイツのクラブに移籍し2シーズン過ごした後、15年よりカンボジアンタイガーFCに加入。

Jリーグのアビスパ福岡で4シーズンプレーしたあと、昨季はドイツリーグで1シーズンを過ごした吉原正人。アンダー世代では日本代表も経験した23歳の大型フォワードは今季、カンボジアリーグに新規参入したカンボジアンタイガーFCに移籍した。カンボジアでプレーすることになった経緯や、未知だった環境で今感じていることなどを語ってもらった。
 
-昨季はドイツリーグのクラブに所属していましたが、どういう形でカンボジアリーグに移籍したのですか?

去年の6月にドイツのシーズンが終わって、一旦日本に帰国しました。その時に日本でもチームを探していたんですが、うまくいかず。日本でチームが見つからなければドイツに戻ることになっていたんですが、日本でのチーム探しが長引いてしまってドイツの移籍期限にも間に合わなくなってしまいました。
 
どうしようかと思って親にも相談したんですが、その時はサッカーをする気もなくなっていたので、とりあえず地元の福岡に戻りました。そこで4ヶ月くらいアルバイトをしていたんですが、その時にカンボジアの話がありました。アビスパ福岡時代の先輩である木原(正和)さんがカンボジアのチームで選手兼監督をすることになって、フォワードを探しているということで。
 
-カンボジアリーグと聞いて、どう感じましたか?

正直、まったくイメージはなかったですね。カンボジアと言えば「アンコールワット」と「地雷」くらいしか浮かびませんでした。でも、ちょうどその話をもらった頃、テレビでカンボジアのことを特集していたんです。プノンペンにイオンができたことや日本人商店街の「絆ストリート」のこととかが取り上げられていて、けっこう日本のものが入っているんだな、とは思っていました。
 
-実際に来てみて、どんな印象を持ちましたか?

3月の頭に来たんですが、実は来てすぐにスリの被害にあったんです。友達に電話しようとして携帯を持っていたら、バイクに乗った二人組が前を通って携帯を持って行かれてしまいました。カンボジアに来て一週間くらいの時だったので、その時は日本に帰ろうかと思いましたね。その後は特に何もないので大丈夫ですが。
 
生活に関しては日本食がすごくたくさんありますし、まったく問題ないですね。特に僕はイオン(大型ショッピングモール)のすぐ近くに住んでいるので、生活面では不自由はありません。逆に去年ドイツにいた時のほうが不自由を感じました。アーヘンというところだったんですが、田舎町で周りにはスーパーくらいしかなかったので。食事にしても外で食べるとなると値段も高いですし、パスタとウインナーとポテトくらいしかないのでバランスも悪くて。結局、自分で作るしかありませんでしたから。
 
-カンボジアのサッカーについては、どんな印象を持っていますか?


レベル的には「全然やれない」と聞いていたので、地域のおじさんの草サッカーのような感じをイメージしていたんですけど、思ったよりできるんだな、と感じました。パスも回せますし、意外とボールを蹴れる選手もいますから。ただ、去年からいた日本人選手に「意外とできるんだね」と言ったら、練習でやっていることはできるけど、新しい練習をしたらまた一からだ、ということでしたけど。木原さんが監督になって新しい練習もするようになって、だんだん良くなってきているんだろうと感じます。
 
-では、今は開幕へ向けていい準備ができている感じでしょうか。


そうですね。自分もチーム作りに関われているという感じがして、今は楽しいです。たとえば、パス&コントロールにしても、ボールのもらい方や動き方にしても、カンボジアの選手たちは基本的なことが全然わかっていないので、僕が教えることもできます。ゲーム中にもサイドの選手などに指示を出しているんですけど、うまくその選手と絡めたりしただけで、成長が感じられたりもします。
 
-カンボジアの選手たちは、言ったことに対しては素直に反応してやってくれますか?


言ったことはすべて聞き入れてくれるんですけど、すぐにはできない選手が多いです。なんでできないの? と思ってしまう時もあるんですけど、たぶん教えられたことがないからできないだけなので、それを今教えればいい、という気持ちで丁寧に何回も言うようにしています。
 
-現状、チームに一番欠けているのはどんな点だと感じますか?


「勝ちたい」という気持ちを出さないところですね。ゴールを決めてもちょっと喜ぶくらいなので、勝ち負けにもっとこだわらないといけない。日本人だけがそれを出しても、やっぱりカンボジア人の選手がそれをもっと表に出さないとダメだと思います。選手が主張しないという印象があって、選手同士が話し合うこともないし、指示も出さない。「みんなで」みたいなものが強くて、「自分が」という選手がいません。ドイツでは11人全員が「自分が」という感じだったので、そこはまったく違いますね。
 
-いわゆる「プロ意識」が足りない。


そうですね。プロはお客さんに来てもらって、お金をもらっているわけなので。勝たないチームを見に来ようとは思わないですよね。まずは勝つことが大前提だと思うので、そこの意識を変えないといけないと思います。いいプレーをして終わり、よかったね、というだけのチームになってしまってはダメだと思いますから。
 
-チームには複数の日本人がいますが、そういう面を変えられると思いますか?


サッカーは「伝染するスポーツ」なので、変えられると思います。日本人選手が「負けたくない」という気持ちを出して鼓舞すれば、たぶんカンボジアの選手も一人、二人とついてきて、そうすれば三人目にも伝染すると思いますから。ドイツでも、一人が激しいプレーをするといたるところでそういうプレーが起きましたし、一人がプレッシャーに行くと周りも続きます。サッカーはそういうスポーツなので。
 
-練習でも試合でも、日本人選手が引っ張っている感じですか?


今は、そうですね。特に、今ボランチをしている友廣(壮希)選手が引っ張ってくれています。
 
-ドイツでは、「気持ちを前面に出す」という部分を強く感じましたか?


言い合って、喧嘩して、削り合って、ドイツでは毎日の練習が戦争みたいでした。ボーッとしていたらみんなから怒られますし、気を抜いたら絶対に怪我をしてしまう感じです。僕がいたのは3部リーグから降格した4部リーグのチームだったんですが、4部以上になると本当に厳しいんです。僕がいたチームでもJ2と戦えるくらいのレベルでしたし、3部になると、J2では勝てないんじゃないかというレベルに感じました。
 
-そういう環境で1シーズンプレーして、自分に変化を感じますか?
 
やっぱりメンタルの面では成長したんじゃないかと思います。日本人は一人でしたし、言葉もわからないなかでいろいろ言われ続けて、それでもやり続けたので。多少は強くなったんじゃないかと。
 
-その経験をカンボジアでも活かせそうですか?


まったく違う環境なので、どういうふうに活かせるかはわかりませんけど。今は経験したことがないことが多くて、とにかく新鮮です。7月の開幕までにチーム力も上げられると思いますし、自分のコンディションもまだまだ上げられる自信があるのでシーズンが楽しみです。
 
-カンボジアで最初のシーズンは、どんなものにしたいですか?


まだ他チームともほとんど試合をしていないので、周りのレベルが全然わからないんですが、今年はまずチームをしっかり確立したいと思います。個人としては得点ランキングの上位に絡むような結果を出したいので、そのためにもチームももっとレベルアップしないといけません。日本人が中心になって頑張れば、新しくできたカンボジアンタイガーFCというチームの名前が今より大きくなると思いますし、カンボジアのファンもどんどんつけてチームを知ってもらう一年にしたいですね。

 
<了>

Text & Photo: 本多 辰成




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