2015-08-30

<プロフィール>
野田智 裕/Chihiro Noda
JP.Voltes.FC(フィリピン)

1988年生まれ、熊本県出身。大津高校、帝京大学を経てアルゼンチン、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、マルタ、ラドビアなど数々の国を渡り歩く。
2011年にアルゼンチンのC.A.Las.Palmasとアマチュア契約、オーストラリアのSwan United FCではセミプロ契約選手としてプレー。2014年、フィリピン2部リーグJP.Voltes.FCと念願のプロ契約を果たした。今期は11試合、18ゴールでリーグ得点王に輝き、チームを来季から1部昇格に導く。

東南アジアの国の中でも、フィリピンサッカーに関する情報は少ない。街中を歩けばスペイン、アメリカの影響が色濃くの残る建築物が乱立しており、国民の関心はフットボールよりもバスケットボールに注がれてきた。しかし、近年ではそんな構図は変わりつつある。今年はフィリピンのチームではグローバルFCが初のAFC CUP出場権を与えられるなど、年々注目度が高まっている。今回はフィリピンリーグに所属する野田が、その現状を明かしてくれた。

 
- 初めにフィリピンリーグに来た経緯を教えて下さい。

野田智裕
(以下:野田)「選手として様々な国でプレーしてきましたが、2013年に帰国した際、将来的にはコーチとしてサッカースクールの運営に携わりたいという強い想いがありました。その目標を考えた時、いろいろな国で経験を積むこと。更にプロサッカー選手としての経歴の有無は重要でした。そこで、タイ、ミャンマーなど東南アジア中のすべてのサッカーチームにコンタクトをとりました。そんな中でフィリピンリーグを選んだのは、英語を学べる国ということが私の中では大きかったです」
 
- 野田さんは、アルゼンチン、オーストラリア、アメリカなどの国々をサッカーで各国を渡り歩いていますね。

野田:「元々はサッカーで飯を食べていけるとは思っていませんでした。高校、大学と名門チームに所属はしていましたが、ほとんど出場機会がなかったので当然ですよね。ただ、どうしても自分の夢を諦めたくなかった。そこで、世界中のどんな国でも『トライアルがある』という話しを聞けば、身体一つで乗り込みました。アルゼンチン、オーストラリア、アメリカ、マルタ、ラドビア、シンガポール、アンティグア・バーブーダなどチャンスがあれば本当にどこにでも行きました」
 
- すごいバイタリティですね。費用面も厳しかったのではないでしょうか?

野田:「7年間も公式戦出場がなかった選手でもやれるんだ、という意地もありました。渡航費はサラリーマンをしながら、県リーグでプレーしていた際の貯蓄を切り崩したり、時間を見つけてフリーターとして働きました。それだけでまかなえない分は、親に援助してもらったこともあります。トレーニングをしてはテストを受けて、チームが見つかるまで働く、という生活リズムでした」
 
- 話しをフィリピンに移します。現在リーグには日本人の選手は多いのでしょうか?

野田:「フィリピンリーグは1部が10チーム、2部が7チームの構成です。日本人選手は私が所属する、JP.Voltes.FC(2部)に6人。グローバルFC(1部)に5人(※編注. 内2名はフィリピン帰化選手)、Kaya FC(1部)に1人です。フィリピンに帰化して、代表に選ばれた佐藤大介選手のようなケースも増えてきています」
 
- サッカーのレベルはどう感じていますか?

野田:「1部のトップチームを除けば、リーグ全体だと地域リーグと大きく変わらないレベルかと。ただ外国人選手の質は高いと思いますね。日本人選手は、元Jリーガー、大卒選手という経歴の選手が中心です」
 
- フィリピンリーグのスタイルはどんなスタイルですか?

野田:「外国人選手の質に頼ったサッカーですね。日本人以外だと、韓国、イラン、スペインといった国の選手が在籍しています。外国人の出場枠が5人まで認められているので、外国人の出来が勝敗に直結します。練習でも戦術練習より、個人のスキルを伸ばすメニューが多いです」
 
- 練習環境、給与などの待遇面を教えて下さい。

野田:「練習環境はチームによって大きく異なります。専用グラウンドやクラブハウスを持っていないチームもたくさんありますね。私のチームは日系企業がスポンサーなので、練習環境は比較的整っているほうです。給与に関しては、2部リーグだと住居、食事、送迎付きで、ある程度の貯金ができる額です。1部の外国人の場合、日本円で20~40万円程度という話しを聞きます」

 
- フィリピンリーグで活躍する日本人は他国への移籍などを考えている選手は多いですか?

野田:「フィリピンリーグは今後盛り上がっていくと思いますが、現状では『ステップアップのためのリーグ』という捉え方をしている選手が多いです。実績を残して、タイやヨーロッパへのチャレンジを狙っていますね」
 
- 東南アジアではスポンサーやオーナーの現場介入の話しを耳にします。フィリピンではいかがでしょうか?


野田:「現場にはあまり介入してこない、というイメージを持っています。他のチームに関しても、現場は監督、コーチに任していると聞きます」
 
- 現在のフィリピンでの経験をどう活かしていくプランを持っていますか?

野田:「私の中では英語を学べている、というのはキャリアにとって非常に大きいです。アルゼンチンにもいたので、スペイン語と英語を理解できれば引退後の生活に幅ができると考えています。語学面に加え、自分が在籍した国とはしっかりと関係性を作っていけるように意識しています」
 
- 最後に、フィリピンリーグ挑戦を考えている方にメッセージをお願いします。

野田:「どこの国でもそうですが、自分が助っ人であるという立場を理解し、フィリピンのスタイルを受け入れる姿勢が最も大切だと思います。文化、語学などストレスを感じる場面は出てきますが、そんな中で選手としていかに違い見せられるか。この点に集約できると思います。現在の日本人選手はほとんどスタメンで出場していますし、国として日本人に対するアレルギーもない。日本サッカーに対する印象も決して悪くないので、チャンスは多いのではないでしょうか」
 

<了>

Text & Photo: 栗田シメイ


栗田シメイ
1987年、兵庫県生まれ。広告代理店勤務を経て、2012年よりフリーに。30ヶ国以上を渡り歩き、
プロ~アマチュアスポーツまで幅広く取材。現在は関西を拠点にサッカー、野球、競馬といったスポーツシーン・ビジネス・海外情勢を取材し、専門誌・情報誌・webなどに寄稿。




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