2015-09-27

<プロフィール>
奥山 達之 / Okuyama Tatsuyuki
Albirex Niigata Singapore (シンガポール・Sリーグ)

現役時代はアルビレックス新潟でプレー。その後、指導者となり同チームのジュニアユース年代、またレディースチームの監督を務める。14年シーズンよりアルビレックス新潟シンガポールに就任。

シンガポール・Sリーグを戦う日系クラブ、アルビレックス新潟シンガポール。現在、同クラブの監督を務めるのが奥山達之だ。アルビレックス新潟の育成年代やレディースチームの監督を歴任したのち、2013年シーズンからシンガポールに渡り、昨シーズンから監督を務める。海外リーグに日本人だけのチームが挑むという、特殊な環境下で戦う指揮官に話を聞いた。
 
-昨シーズンからアルビレックス新潟シンガポールの監督をされていますが、どういった経緯で就任されたのですか?

2012年まではアルビレックス新潟レディースの監督をさせていただいていて、2013年にシンガポールに来ました。最初のシーズンは杉山弘一前監督(現・柏レイソルコーチ)のもとでコーチをさせていただいていました。監督としては今年が2年目になります。
 
-最初、シンガポールリーグについてはどんな印象を持ちましたか?

はじめに感じたのは、スタミナがないということです。リーグ全体に、90分通してアグレッシブにサッカーを続けられるチームがないという印象でした。暑さの影響も間違いなくあるとは思いますが、うちは90分できていますから。他のチームは、できていない理由が何かあるのだろうなと感じます。局面での激しさはあるんですが、全体としてはダラダラとしていてプレーイングタイム(ゲームの中で実際にプレーしている時間)が短いのも気になりました。シンガポールに限らず、東南アジアのチームのプレーイングタイムは60分と言われています。Jリーグは75分くらいですから、短すぎますよね。
 
-その他に、日本とのギャップを感じる部分はありますか?

タイなどもまだそういう面があると思いますが、リーグの運営面はもう少しクオリティを上げなければいけないと感じます。文化的なこともあるので全てを否定するわけではないのですが、タイムスケジュールやグラウンドの状況などゲームを行うためのいろいろな準備の面で、正直、目につくところが多々あります。タイムスケジュールもあってないようなもので、日程変更ももちろんありますから。せっかく暖かくてこんなにいい環境があるわけですし、もうちょっと効率よくやればもっと選手も育つと思います。すごくいい素材の選手もたくさんいますから。
 
-Sリーグのローカル選手には、才能豊かな選手も多いですか?

身体能力の高い選手もいますし、レベルが低いとは思いません。
 
-シンガポール人選手は、どんな特徴があるでしょうか。

体の大きさも近いですし、東南アジアの国はどこも似ているんじゃないでしょうか。シンガポール人選手に限った特徴は特にありませんが、球際の激しさは感じます。行くところは行くし、「やめる」という判断はあまりないというか。行く時はとにかくガツンと行く、というのは感じます。
 
-逆に、海外のリーグで日本人のみのチームとして戦う中で、日本人選手の長所や短所について感じることはありますか?

日本人選手は技術が高いですし、粘り強い。90分やりきるための日々のトレーニングがこなせることも長所だと思います。短所は球際の弱さ。表現は正しいかわかりませんが、「捨て身で行けない」という感じがします。
 
-球際の弱さというのはよく言われることかと思いますが、理由はなんでしょう?

絶対、文化の問題だと思いますよ。人を傷つけちゃいけないとか、そういう育ち方をしてきているので、それがプレーにも表れるのだと思います。それ自体はもちろん悪いことではないですし、厳しくいけない、どこかでセーブしてしまっているんじゃないでしょうか。逆に、外国のチームはそのプレーを悪いことをしているとは思っていないでしょうし、それは彼らの文化では間違った答えではないわけです。単純に肉体の強さとか弱さといった問題ではないと思います。
 
-その部分は、日本サッカーとしてはどうすればいいと思いますか?

それはそれで受け入れるべきだと思います。そういう部分も強いに越したことはないですし、実際、高いレベルの選手はできていると思う。もちろん強くする努力は必要だと思いますが、勤勉さや賢さなどそれ以外の部分で長けているところが日本人にはたくさんありますから。たとえば、今の日本人に「ハングリー精神」と言っても無理ですよね。貧富の差のある国々では実際に「食べることができない」という状況の人たちがいるかもしれませんが、シンガポールの選手だってハングリーなわけではありません。だから、僕はそういうことは気にしていません。近づける努力はすべきですけど、押しつけがましく「彼らはこうやっているだろ?」とか言うことではないと思っています。
 
-そこは文化の違いであって、日本の強みを生かしていけばいいということですね。

シンガポールの選手たちや日本人以外の外国人選手たちがやっている姿というのは、僕らの見方からしたらすごくずる賢い。日本でも高いレベルの選手は意図的にそういうプレーができるようになっていると思いますが、多くの選手は文化的な特徴がそのまま出てしまっているということだと思います。うちの選手たちにとっては、ちょうどいいレベルの中で海外を感じられるという意味でも、Sリーグはすごくいい舞台なんじゃないかと思います。
 
-若い選手が日本を離れて海外でプレーすることによって得られるものは、やはり多いでしょうか。

いっぱいあると思います。シンガポールにはもちろん日本人がたくさん住んでいますけど、日本にいる時のようには助けがありません。日本のように甘えられる環境はありませんから、生活の中でもいろいろと感じることはあると思います。当然、その国の文化に合わせて行動もしなければいけないわけですから、成長する面はたくさんあると思いますよ。
 
-今、Jリーグの「アジア戦略」の一環としても、若い選手をアジアで育てるということが言われています。Jリーグに比べれば東南アジアのリーグはレベルが下がると考えられていますが、それでも若い選手にとってはプラスになると思いますか?

なると思いますね。もちろん、ただ居ればいいというわけではなくて、試合に出なければダメですけど。外国人選手と実際にリーグ戦で対戦できていれば、絶対にプラスになると思います。外国人選手たちはグラウンドでの表現の仕方が違いますから、同じ血が流れている日本人選手と試合をするのとは違うものがある。それを体感することは、経験値として絶対に必要だと思いますから。そういうところから世界に通じるような選手を作るというのは、間違いなく有効なことだと思います。
 
-アルビレックス新潟シンガポールは基本的には若い選手が所属していますが、どんな目標を持っている選手が多いのですか?

ここを拠点にいろいろなところに羽ばたきたい、という選手が多いと思います。実際に来てみればシンガポールは住みやすいですけれど、日本から出るというのは勇気のいることです。そういう意味では、自分を変えようと思って頑張っている選手たちなんじゃないかと思います。
 
-最後に、アルビレックス新潟シンガポールの今の目標を教えてください。

もちろん、今シーズンは優勝を狙っています。クラブとしてもこれまでリーグ優勝はしたことがありませんから、そこに辿り着きたい。クラブに対する思いもありますし、今いる選手たちもすごくいい子たちが多いので、勝たせてやりたいという思いも強いです。外国チームなのでリーグ優勝をしてもACL(AFCアジアチャンピオンズリーグ)などのアジアの大会には出られませんが、いろんなことのために優勝することが必要だと思っています。
 
 
<了>
Text & Photo: 本多辰成



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