2015-11-22



初のW杯アジア2次予選を戦う台湾代表。代表監督が明かす、台湾サッカー界の未来

タイ、イラク、ベトナムと同じグループFで、初となるロシアW杯アジア予選を戦う台湾代表。惜しくも勝点を獲得するには至っていないが、野球が国技に当たる同国の中にあって、代表チームは大きな変革期を迎えつつある。その軌跡は、日本サッカー界が20年以上前に歩んできた道と、重なる部分も少なくないのではないだろうか。台湾サッカーの現在地、未来地図、また自国リーグ開設の可能性まで、代表監督を勤める陳貴人氏に話を聞いた。

―台湾代表として、初のアジア2次予選を戦う意義を教えていただけますか?


陳貴人(以下:陳)「1978年に台湾代表としてワールドカップ予選を戦い始めてから、2次予選を戦うまでに37年の年月がかかりました。そういった意味では、非常に大きな一歩といえるでしょう。協会や国民を動かすだけの結果や内容を残すことができれば、今後の台湾サッカーの未来に繋がっていくはずです。私自身は、『大きなチャンスが来た』と捉えています」
 
―台湾というと、どうしても野球の印象が強いですが。

陳:「実際にその通りだと思います。サッカーの環境も少しずつは良くなってきていますが、野球と比べるとナショナルチームの運営費用は何十分の一程の費用です。とは言っても、数年前と比べると本当に大きな進歩を見せています。以前は代表戦でも、数千人集まれば良いほうでしたので。しかし、去年のアジア予選1時ラウンドの最終戦では、1万人を超える観客がスタジアムに足を運んでくれました。以降はスポンサーも付きやすくなっていますし、代表戦では観客が1~2万人を動員できるほど、国民の関心は高まりつつあります」
 
―代表には海外でプレーする選手は多いのでしょうか?

陳:「中国スーパーリーグでプレーする選手が中心です。陳相良という選手は、中国でも存在感を放っています。あとはベルギーリーグで活躍する、陳昌源にも注目して欲しい。代表の約1/3程度が海外組です」


―台湾国内ではどこのリーグが人気ですか?また、Jリーグの立ち位置も教えて下さい。

陳:「イングランド・プレミアリーグとリーガ・エスパニョーラが放送される機会も多く、この2つのリーグが抜けて人気です。あとは、中国スーパーリーグでしょうか。Jリーグに関しては、去年1度国営放送でガンバ大阪の試合が放送されましたが、リーグ事態はあまり知られていません。個別のチームで言うと、ガンバ大阪や柏レイソルなど、ACLを戦うチームの知名度が比較的高いかと」


―台湾サッカー界が発展するために、何が最も必要だと思いますか?


陳:「やはり自国のプロリーグをスタートさせることです。その点に尽きると思います。現在は、アマチュアの選手が大半で、土のグラウンドで練習しているような環境の中、『プロ意識を持て』というほうが難しい。サッカーを仕事にする人が増えると、レベルは劇的に変化していくはずです。台湾も日本と同じで、野球が国技の国。なので、考え方や運営方法などJリーグを手本にすべきだと思います」
 
―リーグの開幕の動きがあるという話しを聞いたことがありますが、実際のところは?

陳:「今年の年末に協会が4つのプロチームを作る、という動きがあったのは事実です。しかし、スポンサーの問題や中国との関係もあり、実現していません。昔は台湾のチームが、中国リーグで戦ったということもあります。しかし、あくまでこだわるのは自国リーグの創設です。そのためには、インフラや法律、政治的な側面など解決しないといけない問題が山積みです。現状で言うと、まだまだ厳しいというのが正直なところですが、近い将来リーグは誕生するはずと願っています」
 
―その際にはJリーグと連携をとっていくのでしょうか?

陳:「台湾側としてはそうありたいと思います。日本は、アジアでトップレベルの国です。今年も練習試合で、JFLのチームや大学生と試合をさせてもらいましたが、技術的に非常に高いレベルにあると感じました。台湾はフィジカル重視のサッカーとなるため、日本の技術や戦術、経験、メンタルという要素を取り入れることができれば、レベルアップに繋がります。自国リーグが無事開幕することができれば、日本と良い関係性を築ければ理想的といえるでしょう」

 
 

―最後に今後の台湾サッカーの展望を教えて下さい。

陳:「監督の私も含め、サッカー関係者の間で『大きく変わるためのキッカケが欲しい』と、常々話してきました。そのキッカケの1つがワールド杯アジア2次予選であり、実際に観客動員数などを見ても、大きな波が来ていると感じています。これまでは、小さな頃から野球が身近にあり、野球で遊ぶ子供達が大半でした。そして成長して大人になっても、プロ野球を応援するという根深い文化が浸透しています。ただ、今回のワールドカップ予選の存在、自国リーグが開幕することができれば、子供達の関心が次第にサッカーにも移っていくと思います。競技人口が増えてくると、選手・指導者・サポーターのレベルは必然的に伸びていく。そんなサイクルを作るためにも、『自分達が歴史を変えるんだ』と、強い気持ちと責任感をもって戦っていきたいです」




<了>

Text・栗田シメイ PHOTO・施清元

 




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