2016-02-06

【プロフィール】
金古 聖司 / Kaneko Seiji
Yangon United 

東福岡高〜鹿島アントラーズ〜ヴィッセル神戸〜アビスパ福岡〜名古屋グランパス〜鹿島アントラーズ〜タンピネス・ローバーズFC(シンガポール)〜ミトラ・クカール(インドネシア)〜タンピネス・ローバーズFC〜アントーンFC(タイ)〜ヤンゴン・ユナイテッド(ミャンマー)。

東福岡高では史上初の高校3冠に大きく貢献し、「黄金世代」を代表するディフェンダーとして期待された金古聖司。鹿島アントラーズなどでプレーしたJリーグ時代は怪我にも泣き、2009年シーズンからは戦いの場を東南アジアに移した。タイを先頭に、今まさに成長期に突入しようとしている東南アジア。日本サッカーの急成長時代を生きたセンターバックには、今の東南アジアはどのように映っているのだろう。


 
2008年に鹿島アントラーズを退団したあと、東南アジアでの戦いを続けています。まず、最初のシンガポールへはどのような形で移籍したのですか?

鹿島で指導者としての話もいただいていたので現役引退も考えたのですが、怪我も多かったので納得していない部分もありました。Jリーグのクラブからの話もあったんですが、あまり進展しなかったので海外でのプレーを考えました。最初は韓国でチームを探していたんですが、シンガポールから話をいただいたのでそちらに移籍することになりました。
 
-シンガポールで3年過ごしたあと、インドネシア、タイ、ミャンマーと渡って、昨季で東南アジアでのプレーは計7シーズンとなりました。

東南アジアに縁があったのかもしれません。日本では調子が出てくると怪我をするような感じでしたけど、東南アジアに来てからはあまり怪我もしなくなりましたから。練習の強度の違いもあるかもしれませんが、暖かい東南アジアの気候も合っていたのかもしれません。シンガポールでは2度リーグ優勝することができて優勝メダルをもらったんですが、正直、Jリーグの時よりもうれしかったです。日本ではチームが優勝しても、自分はあまり試合に出ていなかったので。
 
Jリーグから東南アジアに来て、ギャップを感じましたか?

最初はやっぱり感じました。シンガポールは、レベル的にも今のタイなどとくらべるとかなり落ちましたから。ディフェンスをサボる選手なども多かったので、最初の頃はとりあえず怒っていました。ただ、もちろん怒るだけではついてきません。長く東南アジアにいるなかで少しずつ、その国の人のために何ができるか、若い選手たちに何を伝えられるかということを考えるようになりました。国ごとに良さがありますし、それぞれのサッカースタイルというのも見えてきましたから。
 
-必ずしも日本が正しいわけではない、という考えに変わっていった感じでしょうか。

そうですね。今はたまたま日本が強い時期というだけで、東南アジアの国と立場が入れ替わる可能性は十分にあると僕は思っています。過去にはそういう時期もあったわけですし。特にタイやインドネシアなどは本当にサッカー熱も高くて、南米に近いような雰囲気があります。そういうものも選手を育てるのかもしれないとも感じています。国技までは行かなくても、サッカーが一番というのを強く感じますから。
 
-東南アジアが日本をひっくり返す可能性もある、というのはいつ頃から感じていますか?

やはりそれぞれの国ですごい選手を見てきたので、少しずつそう感じるようになりました。たとえば、シンガポールにいるときにタイのムアントン・ユナイテッドと対戦する機会があって、タイ代表のエース(ティーラシン・デーンダー)と対戦したんですが、本当に能力が高くてすごい選手でした。インドネシアには闘莉王(田中マルクス闘莉王/名古屋グランパス)のようだと感じる身体能力の高い選手がいましたし、シンガポール代表の(カイルル・)アムリのシュート力も印象的でした。こんな小さな国にこんな選手がいるのか、と。そういう選手たちを見ると、やっぱり可能性を感じます。
 
-能力の高い選手がいて、国民のサッカー熱も高い。国内リーグが発展して育成環境も整えば面白い存在になる、ということですね。

そう思います。それから、ミャンマーなどは特に、選手が背負っているものが違うというのも感じます。リアルにサッカーが家族を養う手段になっていて、そういうのを見ると日本にはない強さがあるのかなと。一方で東南アジアのお金持ちは桁が違うので、Jリーグクラブよりも資金力のあるチームもあります。今、タイが面白くなってきたので、これから周辺国も「タイに追いつけ」でついて行ってほしいですね。
 
-このところ、タイは代表レベルでも一気に力をつけてきました。今のタイのレベルについてはどう感じていますか?

ワールドカップ予選でイラクに追いついたところなどを見ても、力をつけてきたなと感じます。タイの選手はもともと能力が高いですけど、最近のタイ代表の得点シーンを見ると選手の距離感がすごくよくなったと思います。ディフェンスの面ではまだ改善が必要だと思いますけど、タイのあの細かいパス回しで一気に圧力をかけられたら日本も太刀打ちできない可能性がある。今のタイは攻撃に関わっている人数がすごく多いので、ディフェンスとしては判断ミスをしやすくて、かなり守りにくいと思います。これから場数を踏んだら、もっと怖い存在になるんじゃないかと。
 
-最近のタイ代表は見ていても楽しいですし、日本にはないものを感じます。

U-16の代表の試合を見ていて感じたんですが、タイの選手はやんちゃで面白い子がそろっている感じがします。ミスを恐れないでのびのびとやっていて、そういう時はパスも正確です。ノったら怖いですよね。逆に、日本の選手はみんな「いい子」になっている感じがして、見ていてちょっとつまらなく感じてしまうところもあります。日本人の真面目さなのかもしれませんけど、面白いサッカーをするというのは絶対条件だと思います。もちろん日本には頑張ってほしいですが、タイには密かに期待しています。
 
-やはり国内リーグの発展が、タイ代表が強化された一番の要因でしょうか。

そうだと思います。サラリーも一気に上がって、年々レベルも高くなっていますから。それから、タイリーグは世界中のいろんな国から外国人が集まっているのも成長につながっているんじゃないかと。今、Jリーグの外国人はブラジル人ばかりですよね。東南アジアのリーグにはアフリカ人なども多いので、いろんなタイプの選手とマッチアップができる。それも大事なことだと感じています。Jリーグはいろいろな意味で、もうちょっと今の東南アジアを見たほうがいいんじゃないかと思います。
 
-タイに続く存在として、特に可能性を感じる国はありますか?

自分がプレーした国の中で言えば、正直、シンガポールではないんじゃないかと思っていたんですが、今回のワールドカップ予選を見ると意外と頑張っていますよね。逆に、ミャンマーはもうちょっとできるんじゃないかと期待していたんですが、代表の試合を見るとまだまだだなと。ミャンマーは、国際大会にあまり慣れていないのかもしれません。あとは、インドネシアも面白いと思います。人口が2億人以上いてファンも熱狂的ですし、能力の高い選手が多くて可能性を秘めている国です。
 
-ミャンマーに関してはワールドカップ予選では結果が出ていませんが、昨年はU-20ワールドカップ出場という快挙を果たしました。この世代のポテンシャルはどう感じていますか?

リーグ戦ですごいゴールを決めている選手もいましたし、試合に出ている選手は順調に伸びているんじゃないかと思います。これからが楽しみですね。ヤンゴン・ユナイテッドのチームメイトにもU20の代表選手がいたので、「お前たちが今頑張らないと、ミャンマーのサッカーは伸びていかない。日本もそうだった」ということは伝えていました。
 
-金古選手は、ワールドユースで準優勝した日本の「黄金世代」の年代です。当時の日本と今の東南アジアの同年代を比べると、どうでしょうか?

こちらに来てから当時の映像を見たことがあるんですが、今の東南アジアは当時の僕たちのレベルくらいにはなっているんじゃないかと感じました。技術的には小野(伸二)さん(コンサドーレ札幌)とかのレベルではないにしても、ミャンマーの若い世代を見ていてもかなりうまい選手がいます。フィジカル的なものも含めて、「黄金世代」と言われた僕たちの時に近いレベルにあるんじゃないかと。過去の映像を見て、「今の子たちはうまいな」と思ってしまいました。
 
-東南アジアはこれから大きな成長期に入ると思いますが、金古選手は今後、東南アジアのサッカー界とはどのような付き合い方をしていきたいと思っていますか?

現役を引退したあとも、東南アジアに残って選手のために何かできないかということは考えています。それが指導者なのか何なのかはまだわからないんですが。インドネシアでもちょっとそういうことを考えましたけど、ミャンマーにも可能性を感じるのでミャンマーサッカーの発展のために何か関われたらと。ミャンマーに住んでみて感じたのは、子どもが遊べる場所がないということです。タイもそれは同じなんですが、タイにはフットサルコートがたくさんあります。なので、ミャンマーでフットサル場を作りたいというのも一つの夢です。

<了>

Text & Photo: 本多辰成




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